エンブレル®

若年性特発性関節炎(JIA)の患者さんとご家族の方々に「エンブレル」を正しく理解・使用していただくためのサイトです。

監修:横浜市立大学 名誉教授 横田 俊平 先生

エンブレルの安全性

エンブレルによる治療を受ける患者さんへ

薬と副作用について正しくご理解いただき、主治医の指導にかならず従ってください。

エンブレル治療を受けている間、次のような副作用があらわれることがありますので、少しでも体調がおかしいなと感じたら、次の診察日を待たず、すぐに主治医に連絡してください。

予想される主な副作用

注射部位反応

注射した場所が赤くなったり、腫れたり、かゆくなったりすることがあります。ほとんどは一時的なものなので、しばらくすると治りますが、症状がでた場合は必ず主治医に連絡してください。

感染症

エンブレル治療を受けていると、もともと体を守る役目のあるTNFの働きが抑えられるので、免疫(外から入ってきた敵から体を守る力)が弱くなって、感染症にかかりやすくなることがあります。感染症になると、のどが痛くなったり、咳や鼻水が出るといった風邪のような症状が出ます。
その他、発疹、頭痛、腹痛などの副作用も予想されます。

重大な副作用

感染症(敗血症[はいけつしょう]*、肺炎、真菌感染症などの日和見[ひよりみ]感染症**、結核など)

抗TNF療法を受けると、免疫のはたらきが低下するため、病原体に対する抵抗力が低下して、感染症にかかりやすくなることがあります。

*敗血症:病原性の細菌が血液の中に入って全身に広がり、菌が増えた状態を敗血症といいます。
**日和見感染症:健康な人では病気を起こさない弱い病原体(細菌や真菌など)に感染して起こる重大な病気です。

アレルギー反応

口内異常感や皮膚のかゆみ・赤み・熱感などの症状があらわれることがあります。

血液障害

血液中の赤血球、白血球、血小板の一部またはすべてが減少することがあります。

脱髄疾患[だつずいしっかん](多発性硬化症[たはつせいこうかしょう]、ギラン・バレー症候群など)

神経線維の一部が壊されてしまう病気です。

間質性肺炎[かんしつせいはいえん]

肺の奥にある薄い肺胞壁が炎症を起こし、日常生活の動作の中で安静時には感じない呼吸困難やからせきなどの症状がみられる病気です。

抗dsDNA抗体の陽性化をともなうループス様症候群

関節痛、筋肉痛、皮疹などの症状がみられる病気です。

肝機能障害

肝臓の機能が障害を受け、肝機能検査値(AST、ALTなど)が上昇することがあります。

中毒性表皮壊死融解症[ちゅうどくせいひょうひえしゆうかいしょう](Toxic Epidermal Necrolysis : TEN)、皮膚粘膜眼[ひふねんまくがん]症候群(Stevens-Johnson[スティーブンス−ジョンソン]症候群)、多形紅斑[たけいこうはん]

中毒性表皮壊死融解症は、発熱とともにやけどのような皮膚の赤み、痛み、水ぶくれの症状があらわれます。口の中や目の粘膜が赤くなったり、ただれたりすることもあります。皮膚粘膜眼症候群では、口の中、まぶた、陰部などの皮膚粘膜にただれた症状がみられます。また、高熱が出ることもあります。多形紅斑では、体のあちこちの皮膚で赤みの症状があらわれます。

抗好中球細胞質抗体[こうこうちゅうきゅうさいぼうしつこうたい](ANCA)陽性血管炎

発熱、血管の炎症を起こす病気です。全身倦怠感や皮膚、肺、神経の症状があらわれます。

急性腎障害、ネフローゼ症候群

急激に腎臓の機能が悪くなり、蛋白尿、低蛋白血症とそれにともなう脂質異常症、むくみなどの症状があらわれます。

心不全

心臓のポンプ機能が低下し、動悸、息切れ、疲れやすい、倦怠感などの症状があらわれます。

その他注意すること

悪性腫瘍[あくせいしゅよう]

エンブレルとの因果関係は不明ですが、エンブレルの投与を受けた患者さんに悪性腫瘍が発生した例が報告されています。

このほかにも気になる症状があらわれた場合には、医師または看護師、薬剤師にご相談ください。

副作用は早期に発見し、適切な治療をすれば重症化(ひどくなること)を防ぐことができます。
そのために、次のことを守ってください。

  • どんな副作用があらわれる可能性があるか知っておく
  • エンブレルによる治療を受けている間は、定期的に診察や検査を受ける
  • 少しでも体調がいつもと違うと気付いたら、次の診察日を待たず、すぐに主治医もしくは看護師、薬剤師に連絡する
  • 手帳に体調の変化や気になることを記録する

2023年4月作成 ENB47M017A